会の目的 ー大井川鐵道本線の全線復旧ー

大井川鐵道本線の全線復旧

  大井川鐵道本線は、静岡県中部を流れる大井川沿いの金谷(島田市)~千頭(川根本町)駅間を走る鉄道で、1925年3月、上流部の電源開発と森林資源の輸送を目的として創立されました。昭和40年代以降、林業の衰退やモータリゼーションの進捗などにより輸送量に落ち込みが見えてきたため、新たな誘客・観光資源として1976年からSLの復活運転を実施しています。2014年からは「きかんしゃトーマス号」の運行を開始。子ども連れを中心に、全国から多くの観光客が大井川流域の地域を訪れています。

 また大井川鐵道は金谷~千頭間の本線とは別に、千頭から先、井川(静岡市葵区)までの山間地帯を走る井川線(南アルプスあぷとライン)もあります。小さなトロッコ列車が長島ダム付近のアプト式急勾配を登り、ダム湖を渡るレインボーブリッジや湖に浮かぶ奥大井湖上駅などが近年の新たな観光名所にもなりました。

 2022年9月、台風15号が静岡県中部を襲い、大鉄も複数の箇所で被災。特に本線はこれまでにない大きなダメージを負いました。同年12月には金谷~家山間の運行が再開しましたが(10月以降は川根温泉笹間渡まで延伸)、その先の千頭までは依然不通で、先に全線復旧した井川線とも分断された状態です。

 この状況に危機感を抱いた川根本町の有志が、署名活動を通して地元の声を行政に届けようと立ち上げたのが本会です。

 運休前は、多くの人でにぎわっていた千頭駅前は閑散とした状況が続いており、町内の観光地や宿泊施設、飲食店などの売り上げにも大きな影響が出ています。専門家の統計によりますと、大井川鐵道本線が不通になっている影響で年間約12億円以上の経済損失があるといいます。私たちは、どれだけ大鉄が地域に恩恵をもたらしていたかを改めて思い知らされました。この状況が長引けば、観光関連の事業者だけではなく、町全体にも影響が及ぶと危惧しております。

 また前述の井川線はもともと電源開発を目的とした専用鉄道であるため、毎年発生する赤字が補償されていますが、これも線路が千頭駅を介して本線の金谷までつながっていることを前提としたものであり、仮に本線が千頭まで通じなくなると井川線の存続も危うくなる可能性があります。

 同年、大鉄の今後を考える国や県、沿線市町や関連事業者による「大井川鐵道本線沿線における公共交通のあり方検討会」が開かれ、この検討会の中で本線の全線復旧にかかる費用は約22億円かかるとの試算が出されました。私たちは、この検討会が開かれている間に何とか民意を届けたいと、2024年7月末までに国内外から3万6千筆の署名を集め、静岡県知事と国土交通省に提出いたしました。(このうち川根本町民からは約6000人の3分の2にあたる4000筆を集めました)


 2025年3月に開かれた検討会では、現在不通となっている本線の区間を令和10年度までに復旧させるとの合意が交わされました。鈴木知事、染谷島田市長、薗田川根本町長連名の共同コメントによると、「地域に不可欠な資源」「新型コロナや台風による経営悪化」「沿線地域の復旧への強い思い」等を踏まえての今回の合意であるとのこと。同検討会が出した確認書には、工事期間や事業範囲のほか、大鉄の地域振興への協力や県と沿線市町がその他の支援を行うことなどが記されています。今後、地名駅の不通区間から復旧工事が進んでいく計画です。全線復旧へ、光が見えてきました。

 大鉄のSLが走る風景、そして大自然を走る井川線のトロッコ列車は、ふるさとの情景という面のみならず経済面においてもこの地域にとって欠かせないものであり、このまま大鉄が千頭まで来なくなるということは、すなわち観光資源の喪失、川根本町含む沿線全体の魅力の低下、そして地域の衰退につながります。

 全線復旧へ動き出したとはいえ、まだまだ時間はかかります。駅舎の美化活動など沿線の魅力向上にも取り組みつつ、全線復旧した後もたくさんの観光客の皆さんに喜んでもらい、何度も足を運んでもらえるような地域づくりを目指し活動していきます。